Article

天文学:平均赤方偏移1に位置する銀河の集団からのH i 21cm線放射

Nature 586, 7829 doi: 10.1038/s41586-020-2794-7

銀河の進化におけるバリオン過程には、銀河へのガスの流入による中性原子水素(H i)の形成が含まれ、こうした水素はその後分子状態(H2)に変換され、最終的に星へと変換される。従って、銀河進化を理解するには、星の進化とH iおよびH2を理解する必要がある。星については、宇宙の星形成率密度は赤方偏移が1〜3の所で最大になり、その後約100億年の間に1桁低下することが知られているが、この密度低下の原因は分かっていない。ガスについては、銀河のH i含有量の主要なトレーサーである、21 cm波長でのH iの超微細遷移が弱いため、赤方偏移が約0.4以上の所に位置する銀河の原子ガスの質量はこれまで計測できなかった。これは、銀河進化の我々の理解における重大な空白である。本論文では、個々のH iの21 cm線放射の信号を積み重ねることによって得られた、赤方偏移が約1の所に位置する星形成銀河のH iの平均質量の計測結果について報告する。H iの平均質量として、このサンプルの平均恒星質量と同程度の値が得られた。我々はまた、1.4 GHzの電波連続放射からこの銀河の平均星形成率も推定し、新たなガスの流入がない場合、このH iの質量では観測される星形成率を10億〜20億年しか維持できないことを見いだした。これは、赤方偏移が1未満の所に位置する銀河へのガス降着が、星形成銀河の高い星形成率を保つには不十分であった可能性を示唆している。そしてこのことが、赤方偏移が1以下の所で宇宙の星形成率密度が低下している原因である可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度