コンピューター科学:脳型コンピューティングのためのシステム階層
Nature 586, 7829 doi: 10.1038/s41586-020-2782-y
ニューロモルフィック・コンピューティングは、脳から着想を得て、コンピューター工学の次の波を推進する可能性を秘めたコンピューティング技術やコンピューティング・アーキテクチャーをもたらす。そうした脳型コンピューティングは、汎用人工知能を開発する有望なプラットフォームももたらす。しかし、チューリング完全性の概念とノイマン型アーキテクチャーを中心にして構築された十分確立されたコンピューター階層を持つ従来のコンピューティングシステムとは異なり、脳型コンピューティングには今のところ、汎用的なシステム階層や完全性に関する一致した見解がない。これは、ソフトウエアとハードウエアの互換性に影響を及ぼし、脳型コンピューティングのプログラミング柔軟性と開発生産性を損なわせる。今回我々は、ハードウエア完全性の必要条件を緩和する「ニューロモルフィック完全性」と、これに対応する、チューリング完全なソフトウエア抽象化モデルと汎用的な抽象的ニューロモルフィック・アーキテクチャーからなるシステム階層を提案する。この階層を用いると、あらゆるニューロモルフィック完全なハードウエア上で、さまざまなプログラムを一様な表現として記述でき、等価な実行ファイルに変換できる。すなわち、プログラミング言語の移植性、ハードウエアの完全性、コンパイルの実行可能性が保証される。我々は、ツールチェーンソフトウエアを実装して、典型的な各種ハードウエアプラットフォーム上でさまざまなタイプのプログラムの実行をサポートし、ニューロモルフィック完全性によって導入された新たなシステム設計次元を含む、今回のシステム階層の利点を実証した。今回の研究によって、脳型コンピューティングシステムのあらゆる面で効率が高く互換性のある進展が可能になり、汎用人工知能を含むさまざまな応用の開発が促進されると、我々は予想する。

