Article

保全:陸域の生物多様性の減少傾向を食い止め回復させるための統合的な戦略

Nature 585, 7826 doi: 10.1038/s41586-020-2705-y

陸域の生物多様性とそれが提供する生態系サービスがこれ以上失われるのを食い止めるには、相当な努力が必要と考えられている。現在、国際社会では、生物多様性の減少傾向を増加に転じさせるといった壮大な目標が提案されているが、今後も人口増加とそれを養うための食料供給の増加が見込まれており、この目標は達成が困難であるとされている。生息地の開拓は、陸域の生物多様性にとって大きな脅威である。今回我々は、複数の統合評価モデルと生物多様性モデルを用いて、生息地の開拓によって引き起こされた陸域の生物多様性の減少傾向を増加に転じさせることができるかどうか、またそれはどのように実現できるかを評価した。その結果、より広範な持続可能性アジェンダに沿いつつも、前例のない野心的、協調的かつ早急な取り組みが、生息地の開拓によって引き起こされた世界の陸域の生物多様性の傾向を反転させながら、増加する人口を養う食料供給を可能にすることが示された。生物保全地域を拡大し、劣化した土地を再生し、景観を主目的とした保全計画をより一般的な生態系保全へと拡大することができれば、生息地の開拓による生物多様性の減少傾向は、モデル全体で平均して21世紀半ば(信頼区間2042~2061年)までに増加に転じる可能性がある(ただし、モデルによってはこの傾向を示さないものもあった)。しかし、農作物に目を向けると、食料価格は上昇すると考えられ、これらの環境保全対策だけでは将来の生物多様性の減少の半分近く(信頼区間34~50%)が避けられない可能性が示された。これに対し、生息地の開拓を食い止める取り組み、すなわち、作物の収量向上と貿易の促進、食品ロスの削減、食肉消費量の削減といった持続可能な食料システムに向けた変革によって、食料供給と環境保全のトレードオフは緩和される。こうした変革シナリオでは、ほぼ全てのモデルで、2050年までに生物多様性の減少の3分の2以上が回避され、生息地の開拓による生物多様性の減少傾向を反転させることができた。ただし、いくつかの生物多様性の豊かな地域では、生物多様性のさらなる減少を食い止めることは困難と考えられる。生物多様性の減少傾向を実際に増加に転じさせるには、今後気候変動など別の脅威にも取り組む必要があるが、本研究の結果は、2020年以降の生物多様性戦略には大胆な保全努力と食料システムの変革が重要であることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度