植物生物学:カルシウム透過性チャネルOSCA1.3は植物免疫における気孔の閉鎖を調節する
Nature 585, 7826 doi: 10.1038/s41586-020-2702-1
植物は多くの場合、生物ストレスや非生物ストレスを認識すると、気孔を閉鎖する。この応答には、細胞膜を介したカルシウムイオン(Ca2+)の急速な細胞内流入が重要な役割を果たしているが、それに関わるCa2+チャネルの正体は不明であった。今回我々は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のCa2+透過性チャネルOSCA1.3が、免疫シグナル伝達において気孔の閉鎖を制御していることを報告する。PAMP(病原体関連分子パターン)が植物により認識されると、OSCA1.3は速やかにリン酸化される。生化学的解析と定量的リン酸化プロテオミクス解析により、細菌の鞭毛タンパク質フラジェリン由来のペプチド性PAMPであるflg22を投与すると、免疫受容体に結合している細胞質キナーゼであるBIK1が、数分以内にOSCA1.3のN末端の細胞質側ループに結合して、これをリン酸化することが判明した。遺伝学的解析と電気生理学的データからは、OSCA1.3にはCa2+透過活性があり、BIK1によるOSCA1.3のN末端のリン酸化は、このチャネルの活性を上昇させることが分かった。さらに、OSCA1.3とBIK1によるOSCA1.3のリン酸化は、免疫シグナル伝達における気孔閉鎖に不可欠であったが、OSCA1.3はアブシジン酸(非生物ストレスに関連する植物ホルモン)の認識に応じた気孔閉鎖の調節には関与しなかった。今回の研究から、植物の免疫シグナル伝達において気孔閉鎖を行うCa2+チャネルとその活性化機構が明らかになった。また、異なるストレスに応答してCa2+が流入する機構には特異性があることが示唆された。

