免疫学:肝臓–脳–腸神経相関は腸のTreg細胞ニッチを維持する
Nature 585, 7826 doi: 10.1038/s41586-020-2425-3
中枢神経系と腸内微生物相の間の相互作用は炎症性腸疾患と中枢神経系障害の双方向性の影響と密接に関連している。最近の臨床的および実験的な証拠から、この相互作用を説明するために腸–脳を結ぶ軸が考えられるようになってきた。神経免疫相互作用に関する我々の理解の最近の進歩にもかかわらず、腸と脳が情報交換を行って末梢性制御性T細胞(pTreg細胞)の誘導と維持などを含む腸の免疫恒常性をどのようにして維持しているのか、また、環境からのどのような合図が宿主に炎症性腸疾患の発症防止を促すのかは分かっていない。今回我々は、腸のpTreg細胞の適切な分化と維持を確保する肝臓–脳–腸神経相関について報告する。肝臓の迷走神経の感覚求心路は、腸の微小環境を間接的に感知して、感覚入力を脳幹の孤束核へ、最終的には迷走神経の副交感神経路と腸ニューロンへと中継する役割を担っている。迷走神経の感覚求心路を肝臓の求心路レベルで外科的および化学的に撹乱すると、大腸のpTreg細胞の存在量が減少した。これは、腸の抗原提示細胞によるアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)発現とレチノイン酸合成の低下に起因していた。ヒトとマウスの両方の大腸抗原提示細胞でムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化すると、ALDH遺伝子発現が直接誘導されたが、これらの受容体を遺伝的に除去すると、in vitroでの抗原提示細胞刺激が見られなくなった。大腸炎のマウスモデルで肝臓から脳幹へ向かう左迷走神経の感覚求心路を破壊すると、大腸のpTreg細胞プールが減少し、その結果大腸炎に対する感受性が高まった。これらの結果は、新規な迷走神経反射を介した肝臓–脳–腸反射ネットワークが、pTreg細胞の数を制御して、腸の恒常性を維持することを実証している。この自律的フィードバック・フィードフォワード系への介入は、腸の免疫学的疾患を治療あるいは予防するための治療戦略の開発に役立つと考えられる。

