創薬:HIVキャプシドタンパク質を臨床標的とする長期作用型小分子
Nature 584, 7822 doi: 10.1038/s41586-020-2443-1
経口抗レトロウイルス薬は、数百万人のHIV感染者の命を救う治療薬であり、曝露前予防によって新しい感染を防ぐことができる。しかし、多くの治療を経験したHIV感染者の一部は、多剤耐性のため、治療選択肢が限られているか、全く存在しない。さらに、経口薬の連日服用レジメンへのアドヒアランスが徹底されていない場合は、治療の転帰に悪影響が出る可能性があり(ウイルス学的失敗、耐性の発生、ウイルスの伝播につながる)、さらに、曝露前の予防では新たな感染につながる可能性がある。新しい種類の抗レトロウイルス薬の長期作用型薬剤は、多くの治療を経験したHIV感染者にとって待望の治療選択肢となる可能性があり、加えてアドヒアランスの向上にもつながり得る。今回我々は、HIVキャプシドタンパク質の機能を破壊する小分子GS-6207について報告する。GS-6207は、高い効力、in vivoでの全身クリアランスの低さ、皮下注射部位からの緩徐な放出により、長期作用型療法に適している。我々は、X線結晶学的情報を利用して、GS-6207がキャプシドタンパク質モノマー間の保存された界面に強固に結合するように設計した。GS-6207はこの界面において、ウイルス複製サイクルの複数の段階に不可欠なタンパク質間のキャプシドタンパク質を介した相互作用を阻害する。GS-6207は、調べたHIV-1の全てのサブタイプに対してピコモル濃度で抗ウイルス活性を示し、承認済みの抗レトロウイルス薬と高い相乗効果を示したが、交差耐性は示さなかった。第1相臨床試験では、単回皮下投与(450 mg)によるGS-6207単剤療法の結果、9日後に血漿ウイルス量減少のlog10変換値が平均2.2となり、抗ウイルス活性濃度での血漿曝露が6か月以上持続した。これらの結果は、HIVキャプシドタンパク質の機能を標的とする治療法の臨床的妥当性を示しており、GS-6207が、HIV感染を治療あるいは予防する長期作用型薬剤として有望であることを実証している。

