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コロナウイルス:武漢におけるCOVID-19の完全な伝播動態の再構築

Nature 584, 7821 doi: 10.1038/s41586-020-2554-8

世界各国で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を封じ込めるための介入について再検討が行われている中、強力な非医薬品介入によってこの疾患の地域的なアウトブレイク(集団発生)が抑制された中国の武漢での、原因病原体である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の完全な伝播動態の研究から、重要な教訓を得ることができる。今回我々はモデル化手法を用いて、出来事と介入によって決まる5つの期間にまたがる2020年1月1日〜3月8日までの、武漢におけるCOVID-19の全範囲にわたる動態を、3万2583の検査確定症例に基づいて再構築した。発症前感染力、時間とともに変化する確認率、伝播率、集団の移動を考慮して、我々はこのアウトブレイクの2つの主要な特徴として、高い不顕性と高い伝播性を特定した。我々は、2020年3月8日以前の感染の87%(下限は53%)は、未確認(無症状と症状の軽い患者が含まれる可能性がある)であったと推定した。また、アウトブレイク初期の基本再生産数(R0)は3.54(95%信頼区間3.40~3.67)と推定され、これは重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)のR0よりもはるかに高い。多面的な介入は、アウトブレイクの抑制にかなり有益な効果を上げており、R0を0.28(95%信頼区間0.23~0.33)に低下させ、武漢での総感染数を2020年3月8日時点で、推定で96.0%減らしたことが分かった。また、新たな感染が確認されない日が14日連続した後に全ての介入が解除されてから再発生が起こる確率についても調べた。未確認症例を87%あるいは53%と仮定したモデルに基づいた場合、再発生の確率はそれぞれ0.32と0.06と推定され、抑制対策の変更時には、不顕性感染によるかなりのリスクがあることがはっきりと示された。これらの結果は、COVID-19のアウトブレイクを最終的に封じ込めるための継続的な監視と介入の戦略を考慮する際に重要な意味を持つ。

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