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コロナウイルス:COVID-19やSARSの症例および非感染対照群におけるSARS-CoV-2特異的T細胞免疫

Nature 584, 7821 doi: 10.1038/s41586-020-2550-z

以前感染した病原体によって誘導された記憶T細胞は、その後の感染に対する感受性や臨床的な重症度を形作ることがある。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を認識する可能性のある既存の記憶T細胞がヒトに存在するかどうかは、ほとんど知られていない。今回我々は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復中の患者(n = 36)において、SARS-CoV-2の構造領域[ヌクレオキャプシド(N)タンパク質]と、非構造領域(ORF1のNSP7とNSP13)に対するT細胞応答について調べた。その結果、全ての患者で、Nタンパク質の複数の領域を認識するCD4およびCD8 T細胞が見つかった。次に我々は、SARS(SARS-CoVの感染による疾患)から回復した患者(n = 23)が、2003年のSARSアウトブレイク(集団発生)から17年たっても、SARS-CoVのNタンパク質に反応性を示す長期生存記憶T細胞を有していることを示す。これらのT細胞は、SARS-CoV-2のNタンパク質に対してロバストな交差反応を示した。また、SARSおよびCOVID-19の病歴のない人や、SARSやCOVID-19患者との接触歴のない人でも、SARS-CoV-2特異的なT細胞が検出された(n = 37)。非感染ドナーのSARS-CoV-2特異的T細胞では、異なる免疫優性のパターンが見られ、Nタンパク質だけでなくNSP7やNSP13を標的とするものが多かった。NSP7特異的T細胞のエピトープ特性解析からは、認識されるタンパク質断片は、動物のベータコロナウイルスの間で保存されているが、「風邪」を引き起こすヒト関連コロナウイルスとの相同性は低いことが分かった。このようにベータコロナウイルスによる感染は、構造タンパク質であるNタンパク質に対して多特異性を持つ長期生存T細胞免疫を誘導する。一般集団に存在する既存のNやORF1に特異的なT細胞が、SARS-CoV-2感染の感受性や病原性にどのように影響を及ぼすか理解することは、現在のCOVID-19のパンデミック(世界的大流行)を管理するために重要である。

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