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コロナウイルス:SARS-CoV-2に対して強力な中和活性と防御性を示すヒト抗体

Nature 584, 7821 doi: 10.1038/s41586-020-2548-6

現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、健康に対する世界的に重大な脅威となっている。COVID-19は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされ、現在利用可能な医学的対策は限られている。その上、SARS-CoV-2に対する体液性免疫の機序については、今のところまだ十分に解明されていない。今回我々は、スパイク(S)糖タンパク質を標的とする多数のヒトモノクローナル抗体の解析を行い、強力な中和活性を示し、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(SRBD)とヒトアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)との相互作用を完全に阻害する抗体を複数見つけ出した。競合結合アッセイと構造・機能研究から、これらのモノクローナル抗体は、SRBD上の異なるエピトープの認識だけでなく、S三量体の異なるコンホメーション状態の認識によっても複数のクラスに分類できることが分かった。強力な中和活性を示す2種のモノクローナル抗体COV2-2196とCOV2-2130は、認識する部位が重複しておらず、Sタンパク質に同時に結合し、相乗的に働いて野生型のSARS-CoV-2を中和した。SARS-CoV-2感染の2つのマウスモデルで、COV2-2196、COV2-2130、もしくはこれらの抗体両方を組み合わせて受動移入すると、マウスの体重減少が防がれ、肺でのウイルス量や炎症の程度が低下した。さらに、最も強力な2種のACE2阻害モノクローナル抗体(COV2-2196とCOV2-2381)のいずれかを単剤療法として受動移入すると、アカゲザルでのSARS-CoV-2感染が防がれた。これらの結果は、SRBD上の防御性エピトープを明らかにしており、合理的なワクチン設計や強力な免疫治療薬選択のための構造ベースの枠組みを示している。

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