Article

生化学:コルヒチンアルカロイド生合成系の発見と遺伝子導入

Nature 584, 7819 doi: 10.1038/s41586-020-2546-8

植物由来の医用化合物で、生合成の経路が完全に確認されているものはほとんどない。そのため、植物由来の治療薬の多くは、薬用植物あるいは培養された植物細胞から直接単離されている。その代表例がコルヒチンで、これは米国食品医薬品局(FDA)が承認した炎症性疾患の治療薬であり、イヌサフラン属(Colchicum)とグロリオサ属(Gloriosa)の植物を原料としている。今回我々は、トランスクリプトミクス、代謝ロジックと経路の再構成を組み合わせて用い、コルヒチンのほぼ完全な生合成経路を、生合成遺伝子に関する予備知識、塩基配列が解読されたゲノム、もしくは宿主植物での遺伝学的手法なしで明らかにした。我々はまず、グロリオサ(Gloriosa superba)から、N-ホルミルデメコルシンの生合成に関わる遺伝子8個を明らかにした。この化合物はコルヒチンの前駆体で、特徴的なトロポロン環とコルヒチンのファーマコフォアを持つ。また、コルヒチンに独特の炭素骨格を作るのに必要とされる珍しい環拡大反応を触媒する非カノニカルなシトクロムP450が見つかった。さらに我々は、これらの新たに見つかった遺伝子群を用いて、アミノ酸のフェニルアラニンとチロシンから始まってN-ホルミルデメコルシンに至る生合成経路(全部で16の酵素からなる)をベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)に導入した。この研究により、トロポロンを含むコルヒチンアルカロイドに至る代謝経路が確立され、植物が単純なアミノ酸から複雑な生理活性代謝産物を産生するのに用いている独特な化学反応についての手掛かりが得られた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度