海洋科学:海洋熱波による熱変位
Nature 584, 7819 doi: 10.1038/s41586-020-2534-z
海洋熱波(MHW)は、海水温が異常に高い期間が不連続的だが長期間続く現象で、海洋生態系を激変させ、生態や社会経済に深刻な影響を及ぼす場合がある。MHWの全球的なパターン、駆動要因、傾向の解明に、多大な努力が向けられてきた。一般にMHWは、特定の場所における強度と持続性に基づいて特徴付けられており、この方法は、水温の上昇に耐えなければならないサンゴなどの固着生物には特に意味がある。しかし、生態学的および商業的に重要な海洋生物種の多くは、好ましい生息地へと移動することで環境破壊に応答しており、移動性海洋生物種の分布域の劇的な変化は、MHWの顕著な影響の1つである。空間的な水温変動は、長期的な温暖化傾向の観点から広く研究されているが、既存の全球的なMHW分析では考慮されてこなかった。今回我々は、局所的な水温偏差の代わりに、海面水温の等温線の空間的変化によってMHWを特徴付ける測定基準として熱変位を導入し、観測に基づく全球海面水温データセットを用いて、1982〜2019年の全てのMHWの熱変位を計算した。その結果、MHWの間の熱変位は、全球の海において数十から数千キロメートルまで幅があり、MHWの強度とは空間的に相関していないことが明らかになった。さらに、MHWにおける短期的な熱変位の規模は、温暖化傾向から推測される100年スケールの変位のものに匹敵していた(ただし、両者の全球的な空間パターンは大きく異なる)。これらの結果は、MHWとその海洋生物種に対する潜在的な影響に関する我々の理解を広げ、熱変位に最も敏感なのはどの地域か、そして予測される海洋温暖化の下で熱変位がどのように変化し得るかを明らかにしている。MHWに駆動される空間的な変化は、長期的な気候変動に伴う変化に匹敵する規模で今すでに起きており、今回の知見は、こうした変化に対応する海洋資源管理の必要性を浮き彫りにしている。

