コロナウイルス:ゴールデンハムスターでのSARS-CoV-2の発病と伝播
Nature 583, 7818 doi: 10.1038/s41586-020-2342-5
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、SARS-CoVや、キクガシラコウモリ類で検出されたSARS関連コロナウイルスと高いヌクレオチド相同性を持つ新規コロナウイルスであり、世界中に広がって医療制度や経済に大きな影響を及ぼしている。ワクチンや治療法の開発を支援するには、適切な小動物モデルが必要である。本論文では、ゴールデンハムスター(別名シリアンハムスター;Mesocricetus auratus)でのSARS-CoV-2の発病と伝播について報告する。免疫組織化学的解析によって、SARS-CoV-2接種後2日目と5日目には鼻粘膜、気管支上皮細胞および肺の浸潤影(コンソリデーション)領域でウイルス抗原の存在が明らかになり、それに続いて接種後7日目には急速なウイルス排除と肺細胞過形成が認められた。さらに、十二指腸の上皮細胞でもウイルス抗原が認められ、また糞便中ではウイルスRNAが検出された。SARS-CoV-2は接種を受けたハムスターから接種を受けていないハムスターへ、直接接触およびエアロゾルを介して効率よく伝播した。不潔なケージ内の接触感染媒介物を介した伝播は、それほど効率がよくなかった。ウイルスを接種されたハムスターの鼻洗浄液では、ウイルスRNAが14日間にわたって検出されたが、感染可能期間は短く、感染性ウイルスの検出とは相関していたが、ウイルスRNAの検出とは相関していなかった。接種を受けたハムスターおよび自然感染したハムスターでは、接種後あるいは接触後6〜7日目に明らかな体重減少が見られたが、全てのハムスターで14日以内に体重が元に戻り、中和抗体が生じた。我々の結果は、ゴールデンハムスターでのSARS-CoV-2感染に関連する特徴は、軽症のSARS-CoV-2感染患者で見られるものと類似していることを示している。