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ウイルス学:マレーセンザンコウからのSARS-CoV-2に近縁なコロナウイルスの単離

Nature 583, 7815 doi: 10.1038/s41586-020-2313-x

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現在のアウトブレイク(集団発生)は、前例のない世界的な健康問題をもたらしている。このアウトブレイクの原因となった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、SARS-CoVやコウモリコロナウイルスであるRaTG13と高い塩基配列同一性を示す。コウモリはさまざまなコロナウイルスの保有宿主である可能性があるが、SARS-CoV-2にさらに他の宿主種が存在するかどうかは分かっていない。今回我々は、マレーセンザンコウ(Manis javanica)から単離された1つのコロナウイルスをセンザンコウ-CoVと名付け、そのエンベロープ(E)、膜(M)、ヌクレオキャプシド(N)、スパイク(S)のタンパク質におけるSARS-CoV-2とのアミノ酸同一性が、それぞれ100%、98.6%、97.8%、90.7%であることを示す。特に、センザンコウ-CoVのSタンパク質の受容体結合ドメインは、重要でないアミノ酸が1つ異なっている以外はSARS-CoV-2とほぼ同一であった。我々の比較ゲノム解析から、SARS-CoV-2は、センザンコウ-CoVに類似したウイルスとRaTG13に類似したウイルスとの組換えで生じた可能性が示唆された。センザンコウ-CoVは、解析した25匹のマレーセンザンコウのうち17匹で検出された。感染したセンザンコウでは臨床徴候と組織学的変化が見られ、センザンコウ-CoVに対する循環血中抗体はSARS-CoV-2のSタンパク質に反応した。SARS-CoV-2に非常に近縁なコロナウイルスがセンザンコウから単離されたことは、センザンコウがSARS-CoV-2の中間宿主として機能する可能性を示唆している。野生生物の不法取引で最も取引量の多い哺乳類であるセンザンコウから新たに特定されたこのコロナウイルスは、野生生物の取引が効果的に規制されなければ、公衆衛生に対する将来的な脅威になると考えられる。

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