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ウイルス学:マレーセンザンコウにおけるSARS-CoV-2に近縁なコロナウイルスの特定
Nature 583, 7815 doi: 10.1038/s41586-020-2169-0
中国および世界中で、新型コロナウイルスSARS-CoV-2に関連したウイルス性肺炎のアウトブレイク(集団発生)が続いている。このアウトブレイクは、中国武漢の海鮮市場と暫定的に関連付けられていて、そこでの野生動物の売買が人獣共通感染症の起源である可能性がある。SARS-CoV-2の保有宿主はおそらくコウモリだが、ヒトへの伝播を促進したであろう中間宿主が何かは分かっていない。今回我々は、中国南部での密輸取り締まりで押収されたマレーセンザンコウ(Manis javanica)において、SARS-CoV-2に近縁なコロナウイルスを特定したことについて報告する。メタゲノム塩基配列解読から、SARS-CoV-2に近縁なコロナウイルスの2つの亜系統に属する複数のセンザンコウ関連コロナウイルスが見つかり、このうちの1つは受容体結合ドメインにSARS-CoV-2との強い類似性が見られた。センザンコウコロナウイルスの複数の系統が発見され、それらにSARS-CoV-2との類似性があることから、センザンコウを新型コロナウイルス出現の際の有力な宿主候補として考えるべきであり、人獣共通感染症の伝播を防ぐためにセンザンコウを生鮮市場から排除すべきであることが示唆された。