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化学:結合形成へとつながってゆく分子振動の出現機序のマッピング
Nature 582, 7813 doi: 10.1038/s41586-020-2417-3
化学反応の基礎研究では、理論計算または推測によるポテンシャルエネルギー面を用いて、反応座標に沿った分子ダイナミクスを検討することが多い。しかし、全ての原子核運動(すなわち波束の運動)を時間分解計測法で追跡することで、そうしたダイナミクスを実験的に完全にマッピングすることは困難であり、A–B + C → A + B–Cという単純な典型的2分子反応であっても実現されていなかった。今回我々は、単量体水溶液中における三量体金錯体[Au(CN)2−]3の光誘起結合形成時の振動波束の軌跡を、X線自由電子レーザーによるフェムト秒X線溶液散乱法(liquidography)を用いて追跡した。この錯体は、3つの単量体A、B、Cが非共有結合相互作用を通して集合して形成され、A–B間の距離がB–C間の距離よりもやや短い。三次元原子核座標における波束を追跡することによって、光励起直後の60フェムト秒以内でAとBの間に共有結合が形成されてA–B + Cとなることが明らかになった。続いて360フェムト秒以内にBとCの間に第二の共有結合が形成され、共有結合した直線型の三量体錯体A–B–Cが生じた。我々は、この三量体が示す調和振動をマッピングすることで、実験データのみを用いて、特定の基準モードに明確に帰属させた。原理的には、より強度の高いX線を用いることで、金などの散乱因子の大きい原子の運動だけでなく、炭素や窒素などのより散乱因子の小さい原子の運動を可視化できる。これによって、多くの化学反応に関与する原子運動を直接追跡する道が開かれる。

