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健康科学:武漢の2つの病院でのSARS-CoV-2の空気力学的解析

Nature 582, 7813 doi: 10.1038/s41586-020-2271-3

現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイク(集団発生)は、世界規模で急速に拡大している。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)がヒトの呼吸器飛沫や直接接触を介して伝播することは明らかになっているが、エアロゾルによる伝播の可能性については、ほとんど分かっていない。今回我々は、2020年2月と3月のCOVID-19アウトブレイクの間に、武漢の2つの病院のさまざまな場所でエアロゾル中のウイルスRNAの測定を行い、SARS-CoV-2の空気力学的性質について調べた。隔離病棟や換気された病室で測定されたエアロゾル中SARS-CoV-2 RNAの濃度は極めて低かったが、患者が使用したトイレ区域ではこれより高かった。公共区域の大部分での空気中SARS-CoV-2 RNAの濃度は検出可能なレベル以下だったが、混雑しやすい2つの区域は例外であり、この濃度上昇はおそらく、人混みの中のSARS-CoV-2に感染した人々によるものと思われる。医療スタッフが使用する区域の一部では当初、高濃度のウイルスRNAが検出され、これらのエアロゾルサイズ分布はマイクロメートル未満やマイクロメートルを超える領域にピークを示すことが分かったが、厳重な消毒処理の実施後は検出不可能なレベルにまで低下した。これらの病院区域で検出されたウイルスの感染力については確認していないが、SARS-CoV-2はエアロゾルを介して伝播される可能性があると、我々は考えている。今回の結果は、部屋の換気、広い空間、防護服の消毒処理、それにトイレ区域の適切な使用と消毒が、エアロゾル中のSARS-CoV-2 RNA濃度を効果的に抑えられることを示している。今後の研究では、エアロゾル化したウイルスの感染力について調べるべきであろう。

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