Article
海洋科学:21世紀の北極海の酸性化に対する新たな制約
Nature 582, 7812 doi: 10.1038/s41586-020-2360-3
海洋による人為起源炭素の継続的な取り込みは、海洋酸性化をもたらす。この海洋酸性化によって、pHが低下し、生物起源の炭酸カルシウム鉱物である霰石(アラゴナイト)の飽和度(Ωarag)と方解石(カルサイト)の飽和度(Ωcalc)が低くなる。北極海は、もともとΩaragとΩcalcが低いので、将来の酸性化とそれに伴う生態系の影響に最も敏感な海域であると考えられている。しかし、予測される21世紀の酸性化の規模は、さまざまな地球システムモデルの間で大きく異なっている。今回我々は、北極海の深層水形成の代理指標として用いられている、シミュレートされた現在の北極海表層水の密度と、人為起源炭素インベントリーおよび同時に生じる酸性化の予測との間に、複数モデルの新たな関係を見いだした。海面密度の観測結果を適用することで、高排出量の代表的濃度経路(RCP) 8.5の気候シナリオの下での、21世紀末の北極海における人為起源炭素インベントリーが9.0 ± 1.6ペタグラム炭素、海盆平均のΩaragが0.76 ± 0.06、Ωcalcが1.19 ± 0.09に絞り込まれた。今回の結果は、以前の予測よりも大きい局所的な人為起源炭素貯蔵と海洋酸性化を示しており、今世紀の終わりまでに北極海の中深海水層の大半が方解石に関して不飽和になる確率を増大させている。この北極海の酸性化速度の増大は、北極の急速に変化する物理学的条件や生物地球化学的条件と相まって、脆弱な北極海の生態系への気候変動の影響を悪化させる可能性が高い。

