Article
再生医療:全てが多能性幹細胞から作り出された発毛可能なヒトの皮膚
Nature 582, 7812 doi: 10.1038/s41586-020-2352-3
皮膚は、付属器官(毛包や腺)を備えた多層器官であり、体温調節や体液貯留に重要で、外界からのストレスを防ぎ、触覚や痛覚を仲介する。培養および生体工学的に作製された移植片において付属器官を有する皮膚を再構築することは、いまだ達成されていない生物医学的難題である。今回我々は、ヒト多能性幹細胞から複雑な皮膚を作出するオルガノイド培養系を報告する。トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)と繊維芽細胞増殖因子(FGF)のシグナル伝達経路を段階的に調整することにより、球状の細胞塊内に頭部上皮細胞と神経冠細胞が共誘導された。4〜5か月の培養期間中に、重層化した表皮、脂肪が豊富な真皮、皮脂腺を備え色素沈着した毛包で構成される嚢胞様の皮膚オルガノイドの出現が観察された。感覚ニューロンとシュワン細胞のネットワークは神経様の束を形成してオルガノイド毛包のメルケル細胞を標的とし、ヒトでの接触に関連する神経回路を模擬した。単一細胞RNA塩基配列解読および胎児標本との直接比較から、この皮膚オルガノイドは、ヒトの発生の第2三半期の胎児の顔面皮膚と同等であることが示唆された。さらに、この皮膚オルガノイドをヌードマウスに移植すると、平面の有毛皮膚が形成されることが分かった。以上をまとめると、ほぼ完全な皮膚がin vitroで自己組織化し、in vivoでの皮膚再建に使える可能性があることが実証された。我々は、この皮膚オルガノイドが、ヒトの皮膚発生、疾患のモデル化、再建術についての今後の研究の基盤となると期待する。

