バイオインフォマティクス:HIV-1のRNA構造の多様性とそれがRNAスプライシングに果たす役割の解明
Nature 582, 7812 doi: 10.1038/s41586-020-2253-5
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)はレトロウイルスで、10 kbの一本鎖RNAゲノムを持つ。HIV-1は遺伝子産物の全てを1本の一次転写産物から発現しなくてはならず、この一次転写産物は、構造タンパク質や調節因子を含めた多様なタンパク質産物を産生するために選択的スプライシングを受ける。選択的スプライシングは重要な役割を担っているにもかかわらず、スプライス部位の選択を進める仕組みはほとんど解明されていない。スプライシングやウイルス複製の重大な異常につながるRNA同義変異から、未知のシス調節エレメントの存在が示されている。今回我々は、DMS-MaPseq(dimethyl sulfate mutational profiling with sequencing)を用いて細胞内のHIV-1 RNAの構造を調べ、同じRNA配列から想定される選択可能な複数のコンホメーションを明らかにするアルゴリズムを開発し、DREEM(detection of RNA folding ensembles using expectation-maximization)と命名した。そして、集団平均を解析したこれまでのモデルとは相反するが、HIV-1ゲノム全域にわたってRNA構造が不均一な領域が存在することが明らかになった。in vitroで知られていたHIV-1のRev応答配列の選択可能な複数の構造が、細胞内でも存在することが確認されたのに加えて、重要なスプライス部位に複数の選択可能なコンホメーションが存在し、それらが転写産物アイソフォームの存在比に影響することが分かった。スプライシングと細胞内RNA構造を同時に測定した我々の結果により、RNAのコンホメーションの不均一性がスプライス部位の使用やウイルス遺伝子発現を調節しているという、以前からの仮説を裏付ける証拠が得られた。

