Article

生物物理学:グラム陽性細菌の細胞壁の構造

Nature 582, 7811 doi: 10.1038/s41586-020-2236-6

細菌細胞壁の主要な構造成分であるペプチドグリカンは細菌の生存に不可欠であり、その合成は重要な抗生物質の標的となっている。ペプチドグリカンは、グリカン鎖をペプチド側鎖が架橋してできた1個の巨大分子で、細胞の周りを囲んで、内部の膨圧を抑える働きをしている。グラム陽性細菌では、ペプチドグリカンは数十ナノメートルという厚さになり、均一な構造で細胞に機械的強度をもたらすと一般に考えられている。今回我々は、形態的に異なる黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と枯草菌(Bacillus subtilis)について、生細胞と精製したペプチドグリカンを原子間力顕微鏡を使って調べた。その結果、生細胞の成熟した表面は大きくて(最大で直径60 nm)深い(最大23 nm)小孔が特徴で、これらがペプチドグリカンの無秩序ゲルを構成していることが分かった。ペプチドグリカンの内側表面は、より新しく合成された物質で構成され、密度が高く、グリカン鎖の間隔はおおむね7 nm未満であった。内側表面の構造は位置に応じて異なり、円筒状の枯草菌ではペプチドグリカンは円周方向に密に並ぶ一方で、黄色ブドウ球菌の全体、またこの2種類の細菌の両方の隔壁部分では、ペプチドグリカンは密に存在するが、方向はランダムであった。細胞外被の分子構造が判明したことで、その機械的特性や環境との接点としての役割についての我々の理解がまとめられ、また従来の構造生物学的手法を補完する情報がもたらされた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度