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神経科学:におい嗅ぎ行動は無反応の脳損傷患者で意識の存在を示す
Nature 581, 7809 doi: 10.1038/s41586-020-2245-5
重度の脳損傷の後では、患者の意識状態を判定し、患者が意識はあるが反応がない状態なのかそれとも最小意識状態なのかを見極め、後に意識を回復できるか否かを予測するのが難しい場合がある。こうした診断と予後予測は、疼痛管理などの治療戦略を決め、また、終末期の意思決定の基礎になり得るため、極めて重要である。しかし、脳損傷患者の意識状態判定の誤診率は最高で40%に及ぶ。嗅覚は、覚醒の基本機構に関わる脳構造に依拠しており、そのため我々は、嗅覚が意識状態のバイオマーカーになる可能性があるという仮説を立てた。今回我々は、非言語的かつ非課題依存的な指標として知られるにおい嗅ぎ反応(sniff response)を用いて、脳損傷患者の意識状態の判定を行った。におい物質依存的な嗅ぎ行動を測定することで、嗅覚機能の高感度指標が得られた。重度の脳損傷患者で、におい嗅ぎ反応を長期間繰り返し測定したところ、この反応によって無反応状態と最小意識状態とを集団レベルで有意に識別できることが分かった。特に個人レベルでは、無反応の患者ににおい嗅ぎ反応があった場合は将来的な意識の回復が保証されていた。また、におい嗅ぎ反応は長期生存率とも関連していた。今回の結果は、ヒトの脳機能における嗅覚の重要性を浮き彫りにするとともに、脳損傷患者の意識状態と回復可能性を判断するための利用可能なツールを提供するものである。

