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がん:間葉系ニッチによる腸腫瘍発生のパラクリン調整

Nature 580, 7804 doi: 10.1038/s41586-020-2166-3

腸での腫瘍のイニシエーションは、陰窩における変異型と正常型の上皮幹細胞間の競合に依存した確率的過程である。腸幹細胞は、間葉系細胞タイプの多様なネットワークと密接に関連しているが、このネットワークの特徴はほとんど明らかになっていない。また、変異型幹細胞の生理的な間葉系微小環境が腫瘍のイニシエーションに影響を及ぼすかどうかも分かっていない。今回我々は、間葉系ニッチが腫瘍のイニシエーションをトランスに制御しているin vivoの証拠を示す。単一細胞RNA塩基配列解読解析によって腸の間葉が持つ不均一性の特徴を明らかにすることで、陰窩周囲に、アラキドン酸を非常に不安定なプロスタグランジンE2(PGE2)へ構成的に代謝するまれなPtgs2発現繊維芽細胞集団が見つかった。繊維芽細胞のPtgs2特異的な除去は、散発性の自然発生腫瘍の2つの異なるモデルにおける腫瘍のイニシエーションの防止に十分であった。その機構として、間葉系ニッチモデルの単一細胞RNA塩基配列解読の解析から、繊維芽細胞由来PGE2がSca-1+予備幹細胞様の集団の増殖を引き起こすことが分かった。これらの細胞は、Hippo経路のエフェクターであるYapによって駆動される、強力な再生/腫瘍発生プログラムを発現する。in vivoでは、YapはSca-1+細胞の増殖と初期の腫瘍イニシエーションに不可欠であり、マウスとヒトのどちらにおいても腺腫の核に局在していた。また、オルガノイド実験から、PGE2が受容体Ptger4を介したシグナル伝達によって、Yapの脱リン酸化、核移行、転写活性を促進する分子機構が特定された。Ptger4を上皮特異的に除去すると、幹細胞の再生の再プログラム化に異常が見られ、Ptger4変異マウスではSca-1+細胞の増殖や散発性腫瘍のイニシエーションが防止された。従って、腫瘍開始幹細胞がPGE2–Ptger4によってロバストなパラクリン制御を受けることが実証された。患者由来のオルガノイドの解析からは、PGE2–PTGER4はヒトの幹細胞機能も調節することが確かめられた。我々の研究から、大腸がんのイニシエーションが間葉系ニッチによって調整されることが実証され、陰窩周囲のまれなPtgs2発現繊維芽細胞が、ドラッガブルなPGE2–Ptger4–Yapシグナル伝達軸を介して腫瘍開始幹細胞のパラクリン制御を行う機構が明らかになった。

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