材料科学:せん断流で配向させたナノシートに基づく層状ナノ複合材料
Nature 580, 7802 doi: 10.1038/s41586-020-2161-8
骨、歯、軟体動物の殻などの生体材料は、優れた強度、弾性率、靭性を示すことがよく知られている。そうした特性は、延性の有機マトリックス内に形成されている、固い無機ナノフィラー(二次元ナノシートやナノプレートなど)で補強された精巧な層状微細構造に起因する。こうした生体材料の構造に着想を得て、層状構造を持つナノ複合材料を合成する手法が、これまでにいくつか(一層ずつ積層、流延、減圧濾過、磁場配向の使用など)用いられてきた。しかし、物質を選ばす、実用的で、スケーラブルな方法で超高強度層状ナノ複合材料を作製することは、今なお未解決の課題である。今回我々は、互いに混ざり合わないヒドロゲルと油の界面において、二次元ナノシートをせん断流によって配向させることで、高秩序の層状構造を持つナノ複合材料を作製する手法について報告する。例えば、この手法で酸化グラフェンと粘土のナノシートを集積したナノ複合材料は、最高で1215 ± 80 MPaの引張強度と198.8 ± 6.5 GPaのヤング率を示し、これらの値はそれぞれ、天然真珠層(真珠母)の9.0倍および2.8倍に相当する。また今回の手法で粘土ナノシートを集積した場合、その靭性は36.7 ± 3.0 MJ m−3(天然真珠層の20.4倍)、引張強度は1195 ± 60 MPaに達した。定量的な解析からは、今回の高度に配向させたナノシートが有機マトリックスとの間に臨界界面相を形成しており、これが観測された機械的特性を実現していることが示された。さまざまな二次元ナノフィラーの配向に容易に拡張できる今回の手法は、幅広い構造の複合材料に応用でき、高性能の複合材料の開発につながると考えられる。

