Article

膜生物物理学:カルシウム依存性カリウムチャネルのball-and-chain機構による不活性化

Nature 580, 7802 doi: 10.1038/s41586-020-2116-0

不活性化は、開口刺激がまだあるにもかかわらず、小孔を通るイオンの流れをチャネルが終わらせる過程である。神経細胞では、ナトリウムチャネルとカリウムチャネルの両方の不活性化が活動電位の生成と発火頻度の調節に重要である。それぞれのチャネルの細胞質側ドメイン、もしくはアクセサリーサブユニットが開いた小孔の栓となって、「ball-and-chain」機構によりチャネルを不活性化すると考えられている。今回我々は、メタン生成細菌であるMethanobacterium thermoautotrophicum由来のMthKチャネル(完全にカルシウム依存性の不活性化型チャネル)について、脂質環境中の構造をクライオ電子顕微鏡法によって得ることで、カルシウム活性化カリウムチャネルの分子レベルでのゲート開閉機構を明らかにする。Ca2+が存在しない条件下で、閉じた状態の構造1つが得られ、原子論的シミュレーションにより、この構造が室温では脂質二重層中で非常に柔軟性が高く、ゲート開閉を行うリングの大きな揺れ運動と小孔を裏打ちするヘリックスの屈曲が起こることが明らかになった。Ca2+が結合した条件下では、開いて不活性化した多数のコンホメーションを含む複数の構造が得られ、非常に動的なタンパク質であることがさらに示された。チャネルがとるこれらの多様なコンホメーションは、膜貫通領域に対するゲート開閉リングの傾きの大きさによって区別され、チャネルを横断する対称性の破れの存在が示された。さらに、開いたチャネル小孔が見られる全ての構造で、チャネル四量体の1つのサブユニットのN末端が小孔に突き刺さる栓となっていて、自由エネルギーシミュレーションにより、これが強い相互作用であることが示された。このN末端を除去すると、機能的に不活性化しないチャネルと小孔の栓がない開状態の構造が生じ、これまで解像されていなかったこのN末端ペプチドがball-and-chain不活性化機構を担当していることが示された。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度