化学:銅を介したドラッグライクなビシクロペンタンの合成
Nature 580, 7802 doi: 10.1038/s41586-020-2060-z
多成分反応は従来の逐次合成よりもステップエコノミーやアトムエコノミーの面で優れているため、学術界と産業界のいずれの合成有機化学でも頼りにされている。最近、薬品のベンゼン環の生物学的等価体としてビシクロ[1.1.1]ペンタン(BCP)モチーフの価値が上がっており、特に、1,3-二置換BCP部がパラ-フェニル環の代わりとして医薬品化学で広く採用されるようになっている。こうした構造は、ラジカルか金属系求核剤のどちらかを[1.1.1]プロペランに付加させて内部のC–C結合を開くことによって形成されることが多い。得られたプロペランの付加化合物は、従来であれば複数の化学ステップを伴う一連の逐次合成を経て必要な多置換BCP化合物へと変換される。この方法はこれまでのところ有効だったが、複雑かつ多様なドラッグライクな多置換BCP生成物の形成をワンステップで可能にする多成分反応があれば、現行の段階的な方法よりも時間効率が向上すると思われる。今回我々は、さまざまなラジカル前駆体とヘテロ原子求核剤を用いて金属光酸化還元触媒反応プロトコルによって多様な官能基化ビシクロペンタンを合成するための、[1.1.1]プロペランのワンステップ3成分ラジカルカップリングについて報告する。銅を介するこの反応は、短い時間スケール(5分〜1時間)で、複数種(10を超える)の求核剤で起こり、多種多様なラジカル前駆体(アルキルラジカル、α-アシルラジカル、トリフルオロメチルラジカル、スルホニルラジカルを生成する前駆体など)に対応できる。今回の方法を用いて、既知の医薬品のBCP類似体が迅速に合成され、そのうちの1つは、市販の原体より代謝安定性がはるかに高かった。

