化学生物学:概日リズムを変化させるメラトニン受容体リガンドのバーチャルでの発見
Nature 579, 7800 doi: 10.1038/s41586-020-2027-0
神経調節物質のメラトニンは、2種類のGタンパク質共役受容体MT1とMT2の作用を介して、概日リズムと関連する生理機能とを同調させる。松果体から24時間周期で夜にメラトニンが放出されると、これが視床下部の視交叉上核のメラトニン受容体を活性化し、動物の生理や行動を明暗サイクルと同調させる。2種類の受容体は、睡眠障害やうつの患者の概日サイクルを明暗サイクルに合うように調節するための薬剤標的であることが確証されている。しかし、その重要性にもかかわらず、in vivoで活性のあるMT1選択的リガンドはほとんど報告されておらず、これが生物の概日リズムの研究や標的治療の開発を妨げている。今回我々は1億5000万個を超えるバーチャル分子を、構造的な適合と化学的新規性を優先して、MT1の結晶構造とドッキングさせてみた。そして、これらの化合物のうちで高得点を得た38個の分子を実際に合成して調べたところ、470ピコモルから6マイクロモル濃度の範囲で影響を発揮する複数のリガンドが明らかになった。構造に基づく最適化によって、これまでに研究された化学種とはトポロジカルに無関係な2つのMT1選択的インバースアゴニストが得られた。これらは概日リズムの再同調化のマウスモデルでインバースアゴニストとして作用した。これらのMT1選択的インバースアゴニストは、主観的夕暮れの時点で与えると、マウスの概日時計の位相を1.3~1.5時間進めることが分かった。このアゴニスト様の影響は、MT1ノックアウトマウスでは消失したが、MT2ノックアウトマウスでは消失しなかった。この研究によって、MT1選択的に働くリガンドを介してメラトニン受容体の生物学的性質を調節するという選択肢が見えてきたのに加えて、非常に大規模で多様なライブラリーの構造ベースでのスクリーニングから、in vivo活性のあるこれまで報告されていない化学種が発見される可能性が実証された。

