Article
構造生物学:ヒトチログロブリンの構造
Nature 578, 7796 doi: 10.1038/s41586-020-1995-4
チログロブリン(TG)は甲状腺ホルモンのタンパク質前駆体で、このホルモンは脊椎動物の成長や発育、代謝の制御に必須である。TGからのホルモン合成は甲状腺で起こり、チロシン対のヨウ素化と縮合を経て、TGタンパク質の分解により完了する。TG中でチロシン残基が近接しているとカップリング反応が可能になると考えられているが、ホルモン生成に使われるチロシンの位置ははっきりしておらず、TGの三次元構造の欠如が機構の解明を妨げてきた。今回我々は、ヒト完全長チログロブリンの、クライオ電子顕微鏡法により決定された約3.5 Å分解能での構造を示す。構造中にあってホルモンが生成されるチロシン対の全てが明らかになり、これらは部位特異的変異誘発とHEK293T細胞中で発現させたヒトTGを用いたin vitroでのホルモン産生アッセイを使って確認された。我々の解析により、ホルモン生成部位の重要な特徴は、チロシン残基の近接性、柔軟性、周辺溶媒への曝露であることが明らかになった。この反応部位を、TG中からTGとは無関係の細菌のマルトース結合タンパク質(MBP)中にある改変したチロシンドナー・アクセプター対へと導入したところ、TGの場合に匹敵する効率でホルモン産生が起こった。今回の研究は、甲状腺ホルモンの産生と調節の解明を進めるための枠組みを提供するものである。

