気候科学:産業革命以前の14CH4が示す、より大きな人為起源の化石CH4排出
Nature 578, 7795 doi: 10.1038/s41586-020-1991-8
大気中のメタン(CH4)は強力な温室効果ガスであり、そのモル分率は産業革命以前の時代の2倍以上になっている。化石燃料の抽出と使用は、最大の人為的CH4排出源の1つであるが、こうした寄与の正確な規模は議論の的になっている。炭素14のCH4(14CH4)を使って、化石CH4(14Cを含まないCH4)の排出と同時期の生物起源の放出源とを区別できる。しかし、20世紀半ば以降、原子炉からの14CH4の直接排出が十分に絞り込まれていないため、この方法は難しくなっている。さらに、人為的な排出源と天然の地質学的放出源(水たまりや泥火山など)の間での化石CH4の総排出量(現在、年間172〜195テラグラムCH4)の分配については、議論が続いている。排出インベントリーは、後者が総排出量の中で年間約40〜60テラグラムCH4を占めていることを示唆している。約1万1600年前の更新世末期には、地質学的な放出は年間15.4テラグラムCH4未満であったが、この時期は陸域を大きな氷床が覆っており、海水準が低く、永久凍土が広範囲に及んでいたため、現在の放出と完全には類似していない。本論文では、産業革命以前の氷床コアの14CH4の測定結果を用いて、当時の大気への自然な地質学的CH4放出量は年間約1.6テラグラムCH4、最大で年間5.4テラグラムCH4(信頼限界95%)と、現在使われている見積もりより1桁少なかったことを示す。この結果は、人為起源の化石CH4排出量が、年間約38〜58テラグラムCH4、つまり最近の見積もりの約25〜40%過小評価されていることを示している。今回の記録は、大気と気候に及ぼす人間の影響を浮き彫りにしており、全球のCH4収支のインベントリーの確固たる目標を与え、排出量削減目標の策定に役立つ。

