エピジェネティクス:SPENはX染色体不活性化の転写制御とエピジェネティック制御を統合する
Nature 578, 7795 doi: 10.1038/s41586-020-1974-9
Xistは、エピジェネティック調節において、長鎖ノンコーディングRNAの機能の実例の1つを示しているが、XistがX染色体不活性化(XCI)を仲介する仕組みはほとんど解明されていない。最近、転写抑制因子SPENなど、Xist RNAに結合するいくつかのタンパク質が特定されており、そうしたタンパク質の喪失は多数の座位でのXCI異常と関連付けられている。今回我々は、マウスにおいてSPENがin vivoでのXCIの重要な統合因子であることを示し、その作用機構を明らかにする。SPENはマウスの着床前胚や胚性幹細胞で、X染色体上の遺伝子のサイレンシング開始に不可欠であることが分かった。SPENは、XCIを回避する遺伝子の発現を有意に低下させるが、神経前駆細胞でのXCIの維持には必須ではなかった。Xistの発現が上昇すると、SPENはX染色体に迅速に誘導されて、活性な遺伝子のエンハンサーやプロモーターに標的化されることが分かった。遺伝子がサイレンシングされると、SPENはクロマチンから迅速に解離するため、SPENのクロマチンへの係留には活発な転写が必要であると考えられる。我々は、SPENの遺伝子サイレンシング機能の主要なエフェクターは、SPENのSPOCドメインであり、SPOCのXist RNAへの係留が遺伝子サイレンシングの仲介に十分であることを明らかにする。また、SPOCのパートナータンパク質として、NCoR/SMRT、m6A RNAメチル化装置、NuRD複合体、RNAポリメラーゼII、転写の開始や伸長の調節に関与する因子などが突き止められた。我々は、SPENがXCIの開始の分子的統合因子として機能し、活性なエンハンサーやプロモーターにおいて、Xist RNAを転写装置にも、ヌクレオソームリモデリング因子やヒストンデアセチラーゼにも橋渡しすると提案する。

