進化学:アフリカ南部の古湿地における人類の起源と最初の移動
Nature 575, 7781 doi: 10.1038/s41586-019-1714-1
解剖学的現生人類は約20万年前にアフリカで出現した。最古の骨格化石の中には人類の起源がアフリカ東部にあることを示唆するものもあるが、ヒトの遺伝学的な系統発生において最初に分岐した枝を代表する複数の現代人集団はアフリカ南部に存在している。今回我々は、アフリカ南部の現代人集団から得た、代表例が乏しく最も分岐が深い母親由来ミトコンドリアDNAのL0系統の枝に関して、我々の知る限り最大の情報資源を作成し(198の新たなミトゲノムを得て利用可能なミトゲノムを計1217にまで拡大した)、これを用いて、アフリカのザンベジ川の南に暮らすコイサン族の子孫集団L0d1’2系統、L0k系統、L0g系統の地理的隔離を明らかにする。ミトゲノムの時系列、頻度、分散を明確化することにより、L0系統が、アフリカ南部のマカディカディ–オカバンゴ古湿地という残存古湿地内で、約20万年前(95%信頼区間:24万~16万5000年前)に出現したことが明らかになった。遺伝的分岐からは、L0系統が7万年間にわたってこの地に存続し、その後13万~11万年前に故郷を離れて北東–南西方向へと分散したことが示された。古気候の代理指標およびモデルデータからは、湿度の上昇によって最初に北東方向、次いで南西方向へと緑の回廊が開かれたことが示唆された。そして、続くL0系統の故郷の乾燥化が有効集団サイズの維持(L0k系統)に該当する一方、乾湿サイクルとおそらくは海洋での採餌への適応によって南西方向への移住者集団では人口増加が可能になった(L0d1’2系統)。これは、南岸域の広範な考古学的証拠によって裏付けられている。総合すると、解剖学的現生人類の起源はアフリカ南部にあり、この初期集団は、地域的な気候変化によって駆動されたと見られる最初の移動事象が起こるまで、故郷の地にとどまっていたと考えられる。

