Article
ナノスケール材料:反芳香族壁に囲まれたナノ空間
Nature 574, 7779 doi: 10.1038/s41586-019-1661-x
この数十年間で、配位結合に駆動される分子ケージを含めて、ナノサイズの内部空間を有するさまざまな分子ケージ、分子ホスト、ナノ多孔性材料が報告されてきた。そうした分子ケージは多岐にわたって応用されており、用途としては、分子認識や分離、不安定分子の安定化、特異な化学反応の促進などが挙げられる。これまで報告された分子ホスト内のナノ空間の大半は、芳香族の壁に囲まれており、空間壁の性質がホスト–ゲスト挙動に反映されていた。しかし、反芳香族の壁に囲まれたナノ空間を有する分子ケージは、反芳香族化合物が不安定なために、まだ開発されていない。従って、反芳香族の壁がナノ空間の特性に及ぼす影響は、まだ分かっていなかった。今回我々は、4つの金属イオンと6つの同一の反芳香族壁から、反芳香族壁で囲まれたナノ空間を有する自己集合性分子ケージを構築した。理論計算によって、このナノ空間を取り囲む反芳香族壁の磁気効果は、互いに強め合っていることが示された。この予測は、周囲の反芳香族壁による反遮蔽効果が重なったことに起因し、内包されたゲスト分子の1H核磁気共鳴(NMR)シグナルが最大24 ppmの化学シフト値に観測されたことによって裏付けられた。この値は、遊離ゲストの値から低磁場方向へ15 ppmずれており、これまで観測された反芳香族環境に起因する1H NMR化学シフト変化の中で最大である。従って、このケージは、ゲスト分子のシグナルを通常のNMR周波数範囲を大きく超えて移動させる一種のNMRシフト試薬と見なすことができ、ナノ空間に対する反芳香族環境の影響をさらに探る道を開く可能性がある。

