分子生物学:クロマチンのトポロジーの安定化がゲノムの完全性を保護する
Nature 574, 7779 doi: 10.1038/s41586-019-1659-4
DNAの二本鎖切断(DSB)に応答してゲノムの完全性を守るために、哺乳類の細胞は近隣のクロマチンを動員してDNA末端が過剰に切り取られないように遮蔽する。過剰な切除が起こると、修復の忠実度が低下し、健全な染色体の損傷が引き起こされかねない。ゲノムのこのような監視体制を協調させるのは53BP1で、これがDSBに集積すると、それが引き金となってRIF1とシールディン–CST–POLα複合体が次々と引き寄せられる。この経路が核の三次元構造をどのように反映し、影響を与えるかは分かっていない。今回我々は超解像顕微鏡法を用いて、53BP1とRIF1が自律的機能モジュールを形成し、これがDNA切断部位のクロマチンの三次元トポロジーを安定化することを明らかにした。この過程は、トポロジカルドメイン(TAD)配列と共局在している凝縮クロマチン領域に53BP1が集積することで開始され、次にこれらのドメイン間の境界にRIF1が引き寄せられる。53BP1とRIF1が交互に並ぶことで、1個のDSB部位の周囲にあるTAD程度のサイズの構造数個が、円形に並んで秩序を持った配置をとり、安定化する。53BP1かRIF1が大幅に減ると(シールディンの大幅減少の場合は違うが)この配置が壊れ、DSBの両側のクロマチンが脱凝縮し、クロマチン間の空間が狭くなり、DNA修復タンパク質の展開が異常になって、DNAの末端が過剰に切除されることになる。同様なトポロジー的なゆがみはコヒーシンの大幅減少によっても起こることから、DNA切断後のクロマチン構造の維持には、核の三次元構造の形態を決める基本機構が関与していると考えられる。DSBの両側に隣接するクロマチンのトポロジーの安定化はDNA修復とは無関係なので、53BP1とRIF1は、異常なプロセシングからDNA末端を守るための構造的足場を提供する他に、DNA切断によって破壊された座位のエピジェネティックな完全性を守る役割もしていると、我々は考える。

