Article

幹細胞:老化した繊維芽細胞の不均一性は再プログラム化や創傷治癒のばらつきと関連する

Nature 574, 7779 doi: 10.1038/s41586-019-1658-5

加齢に伴う慢性炎症(インフラメージング)は老化の中心的な特徴であるが、これが特定の細胞に及ぼす影響についてはほとんど分かっていない。繊維芽細胞は大半の組織に存在し、創傷治癒に寄与する。繊維芽細胞はまた、誘導多能性幹(iPS)細胞への再プログラム化に最も広く使われている細胞タイプであり、こうした再プログラム化は再生医療や若返り戦略に関係する過程である。今回我々は、老齢マウスの培養線維芽細胞は炎症性サイトカインを分泌しており、個体間でiPS細胞への再プログラム化効率のばらつきが大きいことを示す。個体間のばらつきは老齢の特徴であることが新たに分かってきているが、その根底にある機構は不明である。我々はこのばらつきの駆動要因を特定するため、再プログラム化効率が異なる若齢マウスと老齢マウスの培養線維芽細胞について、マルチオミクスプロファイリングを行った。この手法から、老齢マウスの培養線維芽細胞には炎症性サイトカインを分泌する「活性化繊維芽細胞」が含まれていて、培養細胞中の活性化繊維芽細胞の割合がその培養の再プログラム化効率と相関することが明らかになった。細胞培養間で培養上清を交換する実験から、活性化繊維芽細胞が分泌する外因性因子が個体間で再プログラム化効率がばらつく原因の一部であることが示され、TNFなどの炎症性サイトカインが重要な要因であることが突き止められた。さらに、老齢マウスはin vivoでの創傷治癒速度にばらつきを示すことも分かった。単一細胞RNA塩基配列解読解析から、治癒速度の速い老齢マウスと遅い老齢マウスの創傷には、サイトカインの発現やシグナル伝達に違いを持つ異なる繊維芽細胞亜集団があることが明らかになった。従って、繊維芽細胞構成の変化と、繊維芽細胞が分泌する炎症性サイトカインの比率が、個体間におけるin vitro での再プログラム化にばらつきを引き起こし、in vivoでの創傷治癒速度に影響を及ぼす可能性がある。このようなばらつきは、個体間で異なる確率論的な老化の軌跡を反映していると思われ、高齢者におけるiPS細胞の作製や創傷治癒を改善するための個別化戦略の開発に役立つだろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度