漁業:世界の漁業を利用して微量栄養素の欠乏に取り組む
Nature 574, 7776 doi: 10.1038/s41586-019-1592-6
微量栄養素の欠乏は毎年推定100万件に及ぶ若年死の主な原因であり、一部の国では国内総生産(GDP)を最大11%も減少させていることから、単に食料の生産量を増大させるのではなく栄養の改善に重視した食料政策の必要性が浮き彫りになっている。ヒトはさまざまな食餌から栄養素を得ているが、ヒトの健康に不可欠な、生体内で利用可能な微量栄養素を豊富に含む魚類は、見過ごされることが多い。多くの魚類に関する栄養成分組成の理解や、栄養収量が漁業ごとにどのように異なるのかについての理解が不足していることが、食料と栄養の安全保障のために漁業の潜在力を効果的に利用するのに必要となる政策の転換を妨げている。今回我々は、350種を超える海水魚における7種類の栄養素の濃度データを用いて、環境的および生態学的な特徴からどのように海水魚種の栄養素含有量を予測できるかを推定した。我々はこの予測モデルを用いて、海洋漁業の栄養素濃度の全球的な空間パターンを定量化し、栄養収量をヒト集団における微量栄養素欠乏の広がりと比較した。その結果、熱帯の温度構造で漁獲された種にはカルシウム、鉄、亜鉛が、比較的小型の種にはカルシウム、鉄、オメガ3脂肪酸が、そして寒冷な温度構造で漁獲された種や外洋に摂餌経路を持つ種にはオメガ3脂肪酸がそれぞれ高濃度で含まれていることが分かった。栄養素の濃度と総漁獲量との間に関連性がなく、これは、その漁業の栄養素の質が種の組成によって決まることを明らかにしている。栄養摂取量が不十分な国の多くでは、漁獲した海水魚から利用可能な栄養素の量が、海岸から100 km以内に居住する集団での必要摂取量を上回っており、5歳未満の小児にとっては現在の水揚げ量の一部だけでも特に影響が大きいと考えられる。今回の分析結果は、魚類に基づく食料戦略が世界の食料と栄養の安全保障に大きく貢献する可能性があることを示唆している。

