腫瘍生物学:E-カドヘリンは乳がんの複数のモデルで転移に必要とされる
Nature 573, 7774 doi: 10.1038/s41586-019-1526-3
転移は、がん患者を死に至らしめる主な要因である。in vitroでの細胞の移動と細胞間接着タンパク質のE-カドヘリンのレベルとが逆相関することを根拠に、周囲の組織への浸潤や転移は、E-カドヘリンの喪失に引き続いて開始すると考えられてきた。しかしこの仮説は、ほとんどの乳がんが浸潤性の腺管がんであり、かつ原発性腫瘍や転移性腫瘍でE-カドヘリンを発現しているという観察結果と一致しない。この矛盾を解決するために、我々は管腔と基底の両方の浸潤性腺管がんのマウスとヒトのモデルを用いて、転移におけるE-カドヘリンの遺伝的必要性を調べた。本研究では、浸潤性腺管がんのさまざまなモデルにおいて、E-カドヘリンが転移を促進することを示す。E-カドヘリンの喪失は浸潤を増加させるものの、がん細胞の増殖と生存や、循環血中腫瘍細胞の数、遠位器官へのがん細胞の播種、転移性腫瘍の増殖を低下させる。転写レベルでは、E-カドヘリンの喪失は、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、活性酸素種、アポトーシスのシグナル伝達経路に関わる遺伝子の発現上昇と関連していた。細胞レベルでは、拡散中のE-カドヘリン陰性細胞は、SMAD2/3の核内での増加、酸化ストレス、アポトーシスの上昇を示した。E-カドヘリン陰性細胞のコロニー形成は、TGF-β受容体シグナル伝達、活性酸素の蓄積、アポトーシスを阻害することで救済された。今回の結果は、E-カドヘリンが、浸潤性の腺管がんにおいて、がん細胞が組織から離れて全身へ広がって播種する転移段階中に、活性酸素を介したアポトーシスを制限することによって生存因子として働くことを示している。転移性乳がん細胞でE-カドヘリンを介した生存を阻害する分子戦略を明らかにできれば、乳がんの治療法となる可能性がある。

