Letter
計測学:229Th原子核時計遷移のエネルギー
Nature 573, 7773 doi: 10.1038/s41586-019-1533-4
トリウム229(229Th)の第一励起アイソマー状態229mThは、励起エネルギーが低く放射寿命が長いため、レーザーによって光学的に制御でき、原子核時計を作るための理想的な候補である。原子核時計は、電子殻に基づく現在の原子時計を補完し凌駕すると予想され、相対論的測地学、暗黒物質研究、基礎定数の潜在的な時間変動の観測など、さまざまな応用が考えられるが、その開発はこれまで229mThのエネルギーが正確に分かっていないために阻まれていた。今回我々は、飛行中の中性229mTh原子の崩壊時に放出される内部転換電子の分光測定を用いて、このアイソマー状態の基底状態への遷移エネルギーを0.17 eVの不確かさ(1標準偏差)で直接測定したことを報告する。基底状態と第一励起状態の間の遷移エネルギーは、波長149.7 ± 3.1 nmに相当し、これは高調波発生を介したレーザー分光法で実現できる。今回の方法は、核物理学的測定と原子物理学的測定とを組み合わせて精密計測学を進展させるものであり、今回の知見によって、原子核に対する高分解能レーザー分光法の利用が促進され、かつてない正確さの原子核時計の開発が可能になると予想される。

