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構造生物学:ミトコンドリアのプロトン輸送性トランスヒドロゲナーゼの構造と作用機構

Nature 573, 7773 doi: 10.1038/s41586-019-1519-2

プロトンを輸送するトランスヒドロゲナーゼ[別名ニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ(NNT)]は、細菌の細胞膜と真核生物のミトコンドリア内膜に存在する。NNTは、NADHとNADP+の間のヒドリドの転移を触媒しており、これは膜を通るプロトン1個の移動と共役して起こる。この酵素の主要な生理的機能はNADPHの産生で、NADPHは同化反応の基質であり、また酸化状態の調節因子でもある。一方、NNTは「クレブス回路」の微調整も行っている可能性がある。NNTの欠損は、ヒトでは家族性グルココルチコイド欠乏症、マウスでは2型糖尿病で見られるのと類似した代謝異常の原因となる。NTTの触媒機構には、NADP(H)結合ドメイン全体のほぼ180°の回転が関わっているとされていて、これがヒドリドの転移とプロトンチャネルの開閉を交互に行うと考えられている。しかし、完全なNNTの高分解能構造が得られていないため、この過程の詳細はまだ不明である。今回我々は、哺乳類の完全なNNTのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造を、コンホメーションの異なる複数の状態について明らかにした。NADP(H)結合ドメインがプロトンチャネルを膜の反対側に向けて開口させる仕組みが明らかになり、これら2つの状態の構造が得られた。また、触媒作用に重要なドメイン界面や膜と可溶性ドメインの間の複数のリンカー、これらのリンカーがヌクレオチド交換に果たす役割についても明らかになった。これらの構造によって、NNTでの共役過程の機構を修正することが可能になり、我々が提案した機構はこれまでの多数の生化学研究と一致している。今回の結果は、現在まだ得られていないNNT阻害剤の開発に意味を持ち、こうした阻害剤は虚血再潅流傷害、メタボリックシンドロームや一部のがんの治療に役立つ可能性がある。

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