発生生物学:アクチンを基盤とする粘塑性の歯止め機構が、進行する体軸伸長を確実にする
Nature 573, 7773 doi: 10.1038/s41586-019-1509-4
体軸伸長は、動物の発生における重要な段階であり、動物個体全体を最終的な形態にする。体軸伸長は、分子モーターによって生じる内因性の力、隣接する細胞からもたらされる外因性の力、組織の弾性や摩擦による機械抵抗力という3つの力の相互作用に依存している。機械的な力が、細胞レベルや分子レベルで形態形成に影響する仕組みを解明することは、難しい課題である。最近の研究で、小さな段階の積み重ねが原動力となって、細胞自律的な上皮の形状変化が起こる仕組みの概略が明らかになり、細胞の形状を安定化し、細胞の弾性に対抗する特異的な機構の存在が示唆された。線虫の一種であるCaenorhabditis elegansの胚の伸長は、2折れ期以降、筋肉の活動と表皮の両方に依存する。すなわち、筋肉の活動によって発生した張力が、表皮のメカノトランスダクション経路の引き金を引き、これが体軸伸長を促進する。今回我々は、上皮と収縮性細胞との間に非自律的な機械的相互作用が見られる段階のC. elegans胚で、細胞の形状を安定化するネットワークを特定した。p21活性化キナーゼホモログのPAK-1と遺伝学的あるいは分子的に相互作用してこの経路で働く因子を探索したところ、α-スペクトリンであるSPC-1が見つかった。PAK-1とSPC-1の欠失を組み合わせると、表皮のアクチンストレスファイバーの異常により、体軸の完全な退縮が誘導される。モデル化により、胚の形状の安定化は、機械的な粘塑性変形過程で説明できることが予測された。分子解析からは、細胞の粘塑性の基盤は、アクチンフィラメント切断タンパク質により伝えられる筋収縮が引き起こす表皮マイクロフィラメントの進行性短縮と、フォルミンであるFHOD-1(formin homology 2 domain-containing protein 1)によるアクチンの束化に由来することが示唆された。これらの知見は、ラチェット様の発生過程で働く重要な分子的歯止め機構を明らかにしている。

