社会科学:世界規模でのオンライン憎悪生態の隠れた復元力と適応動態
Nature 573, 7773 doi: 10.1038/s41586-019-1494-7
オンラインでの憎悪(ヘイト)発言や過激主義的発言は、忌まわしい現実社会の出来事と関連付けられてきた。そうした出来事には、憎悪犯罪の最近の急増およびソーシャルメディアでの辛辣な言葉に起因する若者たちの自殺の憂慮すべき増加、2019年にニュジーランド・クライストチャーチで起きた襲撃のような銃乱射事件や集団刺殺傷事件や爆弾事件の誘発、過激派メンバーの勧誘(少女たちを罠にかけて兵士の妻として性的目的で人身売買することなどを含む)、著名人に対する脅迫(2019年に起きたEU離脱反対派議員への言葉の攻撃や、英国王室の一員になった米国人に対する人種差別・女性差別・移民差別が混ざり合った憎悪など)、そしてオサマ・ビン・ラディンの息子やアルカイダに対する支援と結び付いた2019年のISIS後状況下における西洋社会憎悪の再燃などがある。ソーシャルメディアのプラットフォームは、オンライン憎悪との戦いに負けつつあるように思われ、新たな知見が緊急に必要とされている。今回我々は、オンライン憎悪の復元力を理解するカギは、その世界的な「ネットワークのネットワーク」の動態にあることを示す。相互接続された憎悪クラスターは、集合的なオンライン適応に助けられてソーシャルメディアプラットフォームを通り抜ける世界的な「憎悪ハイウェイ」を形成し、時には禁止された後でも「バックドア(裏口)」を使ったり、国や大陸、言語の境界を飛び越えたりすることもある。我々の数理モデルは、単一のプラットフォーム(例えばFacebook)内での取り締まりは、事態を悪化させる可能性があり、やがてオンライン憎悪がはびこる世界的な「ダークプール」を生み出すだろうと予測する。また、現在の憎悪ネットワークは、攻撃を受けると、化学における共有結合の形成に似たやり方で、ミクロレベルで速やかにつなぎ換えが起こり、自己修復することが観察された。この理解により、介入の推奨される(あるいは合法的な)粒度と、トップダウン対ボトムアップの特性で分類される、オンライン憎悪に打ち勝つ手助けとなり得る政策マトリックスの提唱が可能になった。我々は、それぞれの介入の効果の定量的評価を示す。この政策マトリックスは、金融詐欺のようなより広範なタイプの違法オンライン行動に対処するための手段としても利用できる。

