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神経生理学:逃走反応はインスリン経路の活性化により細胞保護機構を障害する

Nature 573, 7772 doi: 10.1038/s41586-019-1524-5

動物のストレス応答には、ストレス要因の性質や持続期間に応じた異なる適応戦略が必要である。捕食などの急性ストレス要因は、迅速かつエネルギーを必要とする闘争・逃走反応を誘導するのに対し、長期的な環境ストレス要因は、高度に保存された細胞保護過程の段階的かつ持続的な活性化を誘導する。進化スペクトラムの全体の動物において、闘争・逃走反応の持続的な活性化は、環境的な困難に対する動物の抵抗性を減弱させる。しかし、逃走反応と長期的ストレス要因の間のトレードオフを調節する分子機構や細胞機構はよく分かっていない。今回我々は、線虫の一種であるCaenorhabditis elegansでは、逃走反応が繰り返し誘導されると寿命が短縮し、保存された細胞保護機構が抑制されることを示す。逃走反応により、無脊椎動物におけるアドレナリンやノルアドレナリンの類似体であるチラミンを放出するニューロンが活性化された。チラミンは、腸においてアドレナリン様受容体を活性化することにより、インスリン–IGF-1シグナル伝達(IIS)経路を刺激し、ストレス応答遺伝子群の誘導を妨げた。対照的に、熱や酸化ストレスなどの長期的な環境ストレス要因は、チラミンの放出を低下させることで、細胞保護遺伝子群の誘導を可能にした。これらの知見から、神経ストレスホルモンが急性の逃走反応と長期的な環境ストレス応答の間の状態依存的な神経スイッチとなっていることが実証され、また、逃走反応が細胞の防御系を障害して老化を加速させる仕組みについての機構的手掛かりが得られた。

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