Letter

社会学:情報ゲリマンダリングと非民主的な決定

Nature 573, 7772 doi: 10.1038/s41586-019-1507-6

人々は意思決定に際して、特に社会的な状況では、異種の情報源を統合しなければならない。しかし、情報は常に自由に流れるとは限らない。ソーシャルネットワークによって制約される場合もあれば、熱狂者や自動ボットによってゆがむ場合もある。今回我々はモデル系として投票者ゲームを開発し、集団的決定における情報の流れを調べた。プレーヤーは、競合する集団(党派)に割り振られ、各プレーヤーが誰の投票意図を見ることができるかを決める「影響ネットワーク」に配置される。プレーヤーは、党派の利益に従って投票するという動機を与えられるが、自分の投票をグループ全体と協調させるという動機も与えられる。数理解析の結果、我々が「情報ゲリマンダリング(information gerrymandering)」と命名したある現象が明らかになった。つまり、2つの党派のサイズが等しく各プレーヤーの影響力が同じであっても、影響ネットワークの構造によって投票結果が一方の党派の側へ傾くことがあるのである。少数の熱狂者を戦略的に影響ネットワークに配置することによっても、情報ゲリマンダリングが誘発され、投票結果が偏ることがある。我々は、予測される情報ゲリマンダリングの結果を、参加者2520人のソーシャルネットワーク実験で確認した。さらに、米国の連邦選挙に先立つ時期のインターネット上の政治討論を含む現実世界の影響ネットワーク、ならびに米国連邦議会およびヨーロッパの複数の立法機関での過去の法案共同提出パターンにおいて、広範な情報ゲリマンダリングが見いだされた。我々の分析結果は、情報の流れが制限されることによる社会構造的な歪曲に、集団的意思決定が影響を受けやすい理由を説明する。また、我々の分析結果は集団レベルの社会的ジレンマについてもはっきりと示している。すなわち、情報ゲリマンダリングは1つの党派が自らに有利となるように決定を動かすことを可能にし得るが、複数の党派がゲリマンダリングに関わると、ゲリマンダリングの合意達成能力が失われて膠着状態に陥るのである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度