古生物学:昆虫化石の眼から明らかになった三葉虫の視覚と節足動物の遮蔽色素
Nature 573, 7772 doi: 10.1038/s41586-019-1473-z
絶滅した節足動物の視覚能力は、化石化した眼から推測することができる。しかし、タフォノミー的過程や続成過程の結果として起こる構造の変化や化学的変化により本来の特徴が変化して、現生種との比較が必要となる場合もある。本論文では、5400万年前のガガンボの眼の詳細な分子組成および微細構造について報告する。これらを総合すると、古代の他のいくつかの節足動物が持っていた視覚系を解釈するための代理情報が得られる。保存状態が良好な古代のガガンボの視覚器官は、石灰化した複数の角膜レンズからなり、それらはユーメラニン色素を含む側壁によって隔てられていた。我々は、現生のガガンボの個眼隔壁にユーメラニンが存在することも明らかにする。これらの個眼隔壁では、ユーメラニンが複眼中の個眼の最も外側に色素壁を形成し、これがキチン質の角膜を包含している。我々の知る限り、ガガンボ化石における今回の発見は節足動物のメラニン遮蔽色素に関する最初の記録であり、分解に強い生体色素と、個眼レンズの初期の続成鉱化作用を伴う、昆虫の眼の化石化様式を明らかにしている。当初はキチン質であったレンズのクチクラの明らかな二次的石灰化は、三葉虫に関して提唱されている方解石質の角膜に対して意義を持つ。すなわち、三葉虫の方解石質の角膜はin vivoの生体鉱物化作用(バイオミネラリゼーション)の産物ではなく、化石化によるアーティファクトであると、我々は推測する。三葉虫の眼は機械的強度のために部分的に鉱化していた可能性もあるが、(より蓋然性の高い)有機質の組成であれば、屈折率分布型の視覚およびレンズ形状の高度な制御によって機能がより強化されていたと考えられる。

