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遺伝学:筋ジストロフィーでの修飾遺伝子の発現上昇による、変異とは無関係の治療法

Nature 572, 7767 doi: 10.1038/s41586-019-1430-x

神経筋疾患は、大型で構造的に複雑な遺伝子の不均一な変異により引き起こされることが多い。補償的に働く修飾遺伝子を標的とすることは、疾患表現型の改善に有益となる可能性がある。今回我々は、マウスでCRISPR活性化システムを用い、先天性筋ジストロフィー1A型(MDC1A)に関連する疾患修飾遺伝子の発現を上昇させる、変異とは無関係な戦略について報告する。MDC1AはLAMA2の変異が原因で、この変異は機能を持たないラミニンα2の産生につながり、これが筋繊維の安定性と末梢神経のミエリン化を障害する。MDC1Aのマウスモデルで、ラミニンα1と呼ばれる構造的に類似したタンパク質をコードするLama1遺伝子を導入して過剰発現させると、筋消耗や麻痺が改善され、Lama1の補償的に働く疾患修飾因子としての重要性が以前に実証されている。しかし、Lama1のサイズは大きく、臨床での遺伝子治療に使われるベクターのパッケージング容量を超過するので、出生後にLama1を上方調節して発現を上昇させることはできない。我々は、MDC1Aのモデルであるdy2j/dy2jマウスで、触媒活性のないCas9(dCas9)、VP64トランスアクチベーター、Lama1プロモーターを標的とする単一ガイドRNAを送達するアデノ随伴ウイルス9(AAV9)を用いて、Lama1発現を調節した。発症前のマウスにこれを投与した際には、骨格筋と末梢神経でLama1発現が上昇し、筋繊維症と麻痺が予防された。しかし、多くの疾患で重要なのは、症状の治療可能時間域と可逆性を調べることである。筋ジストロフィーでは、骨格筋での筋繊維の変化は不可逆的だと考えられてきた。ところが、後肢麻痺と筋繊維症の明らかな症状が見られるdy2j/dy2jマウスでこのAAV9の投与を開始したところ、ジストロフィーの特徴と疾患進行が改善され、解消することが分かった。まとめると、我々のデータは、CRISPR–dCas9を用いるLama1発現の上向き調節の実現可能性と治療の有益性を実証しており、このためMDC1A患者の全てで変異とは無関係な治療が可能になるかもしれない。この手法は、さまざまな疾患修飾遺伝子に対して幅広い適用可能性を持ち、多くの遺伝性疾患や後天性疾患に対する治療戦略となると考えられる。

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