構造生物学:ミトコンドリア膜のリモデリングに関わるGTPアーゼMgmlの構造と集合
Nature 571, 7765 doi: 10.1038/s41586-019-1372-3
ミトコンドリアの適切な機能と生理には、バランスの取れた融合と分裂が重要である。ミトコンドリア内膜のリモデリングには、菌類ではダイナミン様タンパク質であるMgm1(mitochondrial genome maintenance 1)が、動物ではMgm1に近縁のタンパク質であるOPA1(optic atrophy 1)が関わっている。酵母では、Mgm1はミトコンドリアDNAの維持に必要であるのに対して、ヒトのOPA1遺伝子に生じた変異は常染色体優性の視神経萎縮症(視神経に異常のある遺伝性疾患)のよく見られる原因である。Mgm1とOPA1は、ミトコンドリア中では膜内在性の長い形態で、また膜間腔では可溶性の短い形態で存在する。Mgm1の温度感受性変異体を発現する酵母株やOPA1を持たない哺乳類細胞ではミトコンドリアの断片化が見られることから、Mgm1とOPA1は内膜の融合に重要な役割を果たしていると考えられている。これと一致して、機能を持ったMgm1が存在しないと、ミトコンドリアの外膜だけが融合して、内膜の融合は見られない。また、Mgm1とOPA1はクリステの適切な構造を維持する働きがあることも知られている。例えば、OPA1は、クリステ接合部を狭めることによって、アポトーシス促進性因子の放出を防止している。さらに、短い形態のOPA1はミトコンドリアの狭窄部位に局在して、おそらくミトコンドリアの分裂を促進すると考えられている。しかし、Mgm1とOPA1が膜の融合、分割、クリステの構造にどのようにしてさまざまな機能を果たすのかは、現在のところ不明である。今回我々は、好熱性真菌のChaetomium thermophilum由来のMgm1について、結晶構造とクライオ(極低温)電子線トモグラフィー像に基づく構造を示す。Mgm1はG(GTPase)ドメイン、BSE(bundle signalling element)ドメイン、ストーク(柄)、膜結合部位を含むパドル(paddle)ドメイン各1個から構成されている。生化学実験と細胞を用いる実験から、Mgm1のストーク部分が湾曲した四量体を集合させてらせん状のフィラメントを組み立てることが明らかになった。Mgm1を結合させた脂質からなる管のクライオ電子線トモグラフィー像の研究や、膜から再構成した管の蛍光顕微鏡による観察から、四量体が正または負の曲率を持つ湾曲した膜上で集合する仕組みが明らかになった。これらの知見は、Mgm1やOPA1のフィラメントがどのようにしてミトコンドリアの内膜を動的にリモデリングするのかを示している。

