分子生物学:scSLAM-seqによって単一細胞における転写動態の中心的な特徴が明らかになった
Nature 571, 7765 doi: 10.1038/s41586-019-1369-y
単一細胞RNA塩基配列解読(scRNA-seq)は、細胞間の不均一性が、健康と疾患の両方における表現型のばらつきに重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。しかし、現在のscRNA-seq手法で得られるのは遺伝子発現のスナップショットだけであり、転写の真の経時的動態や確率論的性質についての情報はほとんど得られない。さらにscRNA-seq解析には、各細胞のRNAプロファイルが一度しか解析できないという重要な限界がある。今回我々は、代謝的なRNA標識、生化学的なヌクレオシド変換、scRNA-seqを統合して、単一細胞当たり数千の遺伝子について新しいRNAと古いRNAを直接識別して転写活性を記録する、scSLAM-seq(single-cell, thiol-(SH)-linked alkylation of RNA for metabolic labelling seguencing)法を報告する。我々はscSLAM-seqを用いて、マウスの単一繊維芽細胞において溶解性サイトメガロウイルス感染の開始について調べた。古いRNAから推定される細胞周期の状態と感染量により、新しいRNAに基づいた感染量–反応解析が可能になる。従って、scSLAM-seqは単一細胞レベルでの転写活性の差異を可視化し、またそれを説明する。scSLAM-seqはさらに、プロモーターに固有の特徴(TBP–TATAボックス相互作用やDNAメチル化)と相関する広範な遺伝子特異的な差異を持つ宿主遺伝子について、それらの発現における「オン・オフ」切り替えや転写バースト動態も描き出す。このように、遺伝子特異的であるが、細胞特異的ではない特徴から、個々の細胞間のトランスクリプトームや、撹乱に対する転写応答の不均一性が説明される。

