がん:進行前立腺がんにおけるFOXA1の活性化変化の異なる構造クラス
Nature 571, 7765 doi: 10.1038/s41586-019-1347-4
FOXA1(forkhead box A1)はパイオニア転写因子で、前立腺などいくつかの内胚葉由来器官の正常な発生に不可欠である。FOXA1の変異は、ホルモン受容体によって引き起こされる前立腺がん、乳がん、膀胱がん、唾液腺がんでよく見られる。しかし、FOXA1の変化が、がんの発生にどのように影響を及ぼすかは分かっておらず、FOXA1に関してはこれまで、腫瘍抑制性の役割と発がん性の役割の両方について報告がある。今回我々は、1546例の前立腺がんからなる混合コホートを作り、FOXA1の変化が臨床的発生率や遺伝的共変化プロファイルが異なる3つの構造クラスに分類されること、また、FOXA1変化の総合的な保有率は35%であることを示す。クラス1の活性化変異は、ETSあるいはSPOPを変化させることなく初期前立腺がんから発生し、DNAに結合するフォークヘッドドメインのwing-2領域内選択的に繰り返し生じ、クロマチン移動性や結合頻度を高めることができ、前立腺での発がんを促す管腔アンドロゲン受容体プログラムを強力にトランス活性化する。対照的に、クラス2の活性化変異は、転移性前立腺がんで獲得され、FOXA1のC末端ドメインを短縮させ、DNAとの親和性を高めることによりクロマチンへの優先的な結合を可能にし、TLE3不活化を介してWNT経路によって引き起こされる転移を促進する。クラス3のゲノム再編成は、転移性前立腺がんに豊富に見られ、FOXA1座位内の重複や転座からなり、保存された調節エレメント[ここではFOXMIND(FOXA1 mastermind)とする]を構造的に再配置することで、FOXA1などのがん遺伝子の過剰発現を引き起こす。我々の研究は、FOXA1がアンドロゲン受容体によって引き起こされる発がんの仲介に中心的な役割を担うことを再確認し、各クラスのFOXA1変化が前立腺がんのイニシエーションおよび/あるいは転移プログレッションを促進する仕組みについての機構的手掛かりをもたらす。これらの結果は、ホルモン受容体により引き起こされる他のがんの病理生物学的性質の理解に直接関連するものであり、治療戦略においてFOXA1活性を共標的化することの合理的な説明になる。

