Letter

惑星科学:月の後期集積の歴史の再構築

Nature 571, 7764 doi: 10.1038/s41586-019-1359-0

惑星形成の後期集積段階の追跡には、強親鉄性元素(HSE;すなわち、金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム)が重要であることは、かねてから認識されている。しかし、月の集積の歴史の正確な本質は依然として謎である。地球と月のHSEの収支にはかなりの不整合があり、地球は月に比べて、不釣り合いなほど多くのHSEを集積させたようである。この難問を説明するためにいくつかのシナリオが提案されており、それらには、数個の大きな衝突天体による地球へのHSEの輸送、地球の重力集束因子を強めた力学的に冷たい軌道上への小石サイズの天体の集積、約41億年前以前の衝突フラックスを大幅に減少させた「鋸歯状の」衝突モデルなどがある。しかし、これらのモデルのほとんどでは、月の衝突天体保持比(衝突された天体に保持される衝突天体の質量の割合)が高いと仮定している。今回我々は、一連の衝突シミュレーションを行って衝突天体保持比を定量化し、次に、単調に減衰する衝突フラックスを考慮するモンテカルロ法によって、月の歴史を通して月の地殻とマントルに集積した衝突天体の質量を計算した。その結果、月の衝突の歴史全体にわたる平均的な衝突天体保持比が、これまでの見積もりの約3分の1であることが見いだされた。今回の結果は、月の地殻とマントルのHSEの収支を一致させるには、HSEの保持が月のマグマオーシャンの大半が固化した43億5000万年前に始まっていたはずであることを示している。それ以前に集積された質量については、おそらく月のマントルが結晶化した際に、HSEが月のコアへと失われたに違いない。低い衝突天体保持比と、月のマントルにおけるHSEの遅い時期の保持を組み合わせることによって、月の後期に集積された質量が地球と比べて見かけの上では少ないことの現実的な説明が得られる。

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