地球化学:新第三紀の寒冷化は風化フラックスの増大ではなく地表の反応性によって駆動された
Nature 571, 7763 doi: 10.1038/s41586-019-1332-y
新第三紀における長期にわたる寒冷化、二酸化炭素分圧の低下、極域の永続的な氷床の形成は、山々の隆起と侵食の増大と、その結果のケイ酸塩鉱物の風化の増加による大気中の二酸化炭素の除去が原因とされることが多かった。しかし、侵食率の地質記録は平均化バイアスの影響を受ける可能性があり、風化フラックスの増大の規模、そしてその存在さえもまだ議論の的になっている。さらに、提案されている侵食の増大に対して見積もられた風化の増大では、大気からほぼ全ての炭素が除去されたと考えられるため、炭素循環における質量収支を維持するための補償的な炭素フラックスの存在が示唆されている。一方、こうした異なる見解の折り合いをつけるための別の原因として、風化フラックスの増大ではなく、より広い新しい鉱物の表面積や反応性鉱物の供給に起因する地表の反応性の増大が提案されている。本論文では、風化に敏感な2つの同位体トレーサー(安定な7Li/6Liと宇宙線生成核種の10Be/9Be)を追跡する炭素循環の倹約モデルを用いて、大気中の二酸化炭素の減少と、海水の7Li/6Liの増加を同時に生じさせ、海水の10Be/9Beを過去1600万年にわたって維持するには、地表面の反応性の増大が必要であることを示す。我々は、全球のケイ酸塩の風化フラックスは、全球のケイ酸塩の風化強度(ケイ酸塩の風化から導かれる全削剥フラックスの割合) が低下しても、侵食の増大によって維持され、一定であったことを見いだした。従って、新第三紀の長期にわたる寒冷化は、風化と侵食への削剥の分配の変化を反映している。削剥の分配の変動とその結果生じるケイ酸塩の風化強度の変化によって、炭素循環における質量収支を維持する必要はあるがケイ酸塩の風化フラックスの増大を必要とせずに、海洋の同位体記録と侵食の記録が整合的に説明される。

