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化学生物学:大規模な化合物–遺伝的相互作用により得られた新規の複数クラスの結核菌阻害剤

Nature 571, 7763 doi: 10.1038/s41586-019-1315-z

薬剤抵抗性レベルの上昇に対抗するには新たな抗生物質が必要であり、優先順位が最も高いのは結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する新しい薬剤である。しかし、従来の全細胞スクリーニングや生化学的な抗生物質スクリーニングはうまくいっていない。今回我々は、PROSPECT(primary screening of strains to prioritize expanded chemistry and targets)と名付けた戦略を開発し、細菌にとって必須の標的を低減させた株のプールに対して化合物のスクリーニングを行った。結核菌の474の必須遺伝子を標的とした改変株を作製し、100〜150株からなるプールを用いて、活性の高い化合物のライブラリーと不偏的な化合物ライブラリーに対してスクリーニングを行い、850万を超える化合物–遺伝的相互作用を探索した。その結果、一次スクリーニングで、野生型結核菌のみのスクリーニングよりも10倍以上のヒットが見つかり、化合物–遺伝的相互作用から、標的についての直接の手掛かりが得られた。我々は、DNAジャイレース、細胞壁、トリプトファン、葉酸生合成、RNAポリメラーゼを標的とする40以上の化合物に加え、EfpAを標的とする阻害剤を特定した。化合物最適化により、野生型結核菌に対して強力な活性を有するEfpA阻害剤が得られた。このことから、従来の創薬戦略では発見できなかっただろう標的に対する阻害剤を得るためのPROSPECTの能力が実証された。

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