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遺伝学:非コード領域の欠失によって明らかになった腸の機能に不可欠な遺伝子
Nature 571, 7763 doi: 10.1038/s41586-019-1312-2
大規模なゲノム塩基配列解読によって、疾患に関連する変異の発見速度がかなり上がろうとしているが、そうした変異の機能の解釈は、いまだに難しい。今回我々は、ICR(intestine-critical region)と名付けたヒト第16染色体上の配列の欠失が、乳児の難治性先天性下痢の原因になることを明らかにする。トランスジェニックマウスでのレポーターアッセイによって、ICRには、消化器系の発生の際に転写を活性化する調節配列が含まれていることが分かった。マウスでICRを標的として欠失させると、ヒトの疾患を再現する症状が引き起こされた。トランスクリプトーム解析からは、注釈付けされていないオープンリーディングフレームの1つであるPercc1がこの調節配列に隣接しており、ICRが欠失したマウスの発生中の腸ではこの遺伝子が発現しなくなっていることが明らかになった。Percc1ノックアウトマウスには、ICRが欠失したマウスと患者に見られるのと同様な表現型が見られたが、ICRで活性化されるPercc1遺伝子を導入するだけで、ICRを持たないマウスに見られる表現型が救済された。まとめると我々の研究結果は、腸の機能に不可欠な遺伝子を新たに1つ明らかにするとともに、既知のタンパク質をコードする遺伝子に影響しない臨床上の遺伝的知見が増えているがその解釈にはin vivoでの標的化研究が必要なことをはっきりと示している。

